投稿日:2026年04月03日 BLOG

今から10年以上前の話です。
私がまだプロコーチとして駆け出しの頃(当時は週末起業という形でプロコーチ活動をしていました)、ICF(国際コーチング連盟)のMCC(マスター・サーティファイド・コーチ)のコーチが主催するセミナーでこんな言葉を耳にしたことがあります。
「プロコーチはクライアントの話を聴かない」
当時の私は、一瞬、頭の中が「?」となりました。おそらく一緒に参加していた受講者も同じ感覚だったと思います(笑)。
現在、コーチングを学習中の方やプロコーチとして駆け出し中の方も、ひょっとしたら当時の私と同じような感覚を持つのではないでしょうか。
プロコーチが「クライアントの話を聴かない」と言うとき、それは決して「無視している」ということではありません。むしろ「言葉の表面だけに囚われない」という、極めて高度な傾聴姿勢を逆説的に表現していると言って良いでしょう。
クライアントがコーチに話をするとき、クライアントはテーマの背景や詳細、また、自分の考えなどを一生懸命に話してくれます。
しかし、コーチがその話に没入し過ぎると、そこに同意や評価などが発生しやすくなり、コーチは「クライアントをサポートする」というコーチング本来の目的を果たしにくくなってしまいます。
「クライアントの話を聴かない」ことの真意は、「クライアントの語るストーリーに同調するのではなく、クライアントの存在そのものを観察する」という、高いプロ意識からくる表現方法のひとつと言って良いのではないでしょうか。
上記の考察は、プロコーチにとって「聴かないもの」と「聴くもの」を分類することで、より明確になってくると思います。
・聴かないもの
クライアントの話すテーマのディティール(細部・詳細など)
・聴くもの
クライアントがテーマを話すときの表情や声のトーン、繰り返される言葉、クライアントの価値観など
本当の意味でクライアントの話を「聴く」(=クライアントの存在そのものを観察する)ためには、やはり、ICFコア・コンピテンシーにある項目2「コーチングマインドを体現している」や、項目5「今ここに在り続ける」の実践が求められると思います(2025.12.26付BLOG「自分の感情をコントロールする」参照)。
そこでも触れていますが、それを強化するためのトレーニングのひとつとして、マインドフルネスの実践があります。
マインドフルネスとは、ここでは「"今という瞬間"に注意を向けている状態」をつくるためのひとつの方法ですが、手軽にできることとしては「瞑想」が挙げられます。
You Tubeなどでもたくさん紹介されていますので、ご興味のある方は一度実践されてみてはいかがでしょうか。
答えを急ぐ現代のビジネスパーソンに、戦略的に思考の「余白」をつくり出す。これこそが対話によるコーチングの醍醐味と言えるでしょう。
情報の波を留め、マインドフルに自分の内面に向き合う時間は、クライアントに表面的な答えを超えた納得感をもたらしてくれます。
人間だからこそ、プロコーチだからこそできる「本物の対話」が、クライアントの孤独を和らげ、次なる変容へと導いてくれるのです。
コーチングオフィス エン代表 大石 典史