投稿日:2026年04月17日 BLOG

コーチングの傾聴スキルのひとつに「沈黙」があります。
この「沈黙」は、コーチからの質問を受けて、クライアントが自分の考えを深めたり、感情に向き合ったりする時間であり、クライアントの気づきを促すための有効なスキルとして国際コーチング連盟(ICF)においても重視しているところです。
具体的には、ICFのコア・コンピテンシーのひとつに以下のような一節があります。
「沈黙、間、または振り返りのための余白をつくり出し、許容している」(B.関係性を共に築く「5.今ここに在り続ける」細目6より)
私はこの一節の中で、「余白(をつくり出し)」という言葉に惹かれます。
理由は、この「余白(をつくり出すこと)」は、一見すると受動的な行為のように受け取れますが、実は、そこにはコーチの能動的な姿勢を感じることができ、コーチにしかできないことのように思うからです。
また、最近思うことは、クライアントに「余白」を与えようとするためには、コーチが自ら「余白」をつくることが先決ではないか、ということです。
コーチが自ら「余白」をつくると言っても、セッション時に「さあ、余白をつくろう」と思っても、すぐに実践できる性質のものではないと思います。
コーチの「余白」とは、やや大袈裟になりますが、コーチの「生き方(あり方)そのもの」と表現しても良く、それはつまり、一朝一夕には構築できない性質のものであるように感じるのです。
では、「余白」をつくるためにどうしたら良いかということですが、日頃からできることとしては、以下のような習慣を身につけることが大事であるように思います。
一日あるいは一週間の単位で、あえて「何もしない、何も考えない、スマホも見ない(笑)」時間をつくるということです。脳をいわゆる「待ち状態」にしないことで脳の疲労を最小限に抑え、いざというときに「考えられる」スペースを確保しておきます。
すべてを正解や完了で埋めようとする、いわゆる完璧主義は「余白」の最大の敵となります。「知らない」「わからない」ことに対し、すぐに検索したり結論を出したりせず、「今は保留にしておこう」という練習をします。いわゆる「ネガティブ・ケイパビリティ」を養うということですね。
「余白」とは、思考することを止めて身体に立ち戻るということでもあります。具体的には、自分の呼吸に集中するとか、手足の感覚に意識を向けるといったことになりますが、成果を上げるためには、「マインドフルネス」の習慣を身につけることが効果的です。
コーチが「余白」をつくるためには、何かを「足す」というよりも「手放す」という、いわゆる「引き算」の感覚が重要なのかもしれません。
ふと、あるコーチの方が話していた言葉を思い出しました。
それは「セッションの質は、セッションの合間に(コーチが)何をしているかで決まる」というものですが、あなたがコーチなら、セッションの合間に何を手放しますか?
答えを急ぐ現代のビジネスパーソンに、戦略的に思考の「余白」をつくり出す。これこそが対話によるコーチングの醍醐味と言えるでしょう。
情報の波を留め、マインドフルに自分の内面に向き合う時間は、クライアントに表面的な答えを超えた納得感をもたらしてくれます。
人間だからこそ、プロコーチだからこそできる「本物の対話」が、クライアントの孤独を和らげ、次なる変容へと導いてくれるのです。
コーチングオフィス エン代表 大石 典史