投稿日:2026年07月17日 BLOG

コーチングにおける「質問する」スキル。
「聴く」スキルとともに、コーチングの代名詞的なスキルのひとつと言っても良いでしょう。
コーチがこの「質問する」スキルを使うときには、クライアントの中にあるものを引き出すために、通常はオープンクエスチョンを行うことが求められます。
オープンクエスチョンとは、クローズドクエスチョン(=Yes/Noで答えられる質問)とは反対に、Yes/Noでは答えられない質問、すなわち、相手にとっては自由度の高い答えを引き出せる質問のことを言います。
例えば、「その問題を解決するために●●をしますか?」という質問だったら、それはクローズドクエスチョンになり、クライアントの答えに制限をかけてしまいますが、「その問題を解決するために、あなたができることは何ですか?」という質問だったら、それはオープンクエスチョンになり、クライアントの中にあるもの(=複数の可能性)を引き出すことができます。
コーチングを学習し始めると、これまでの自分の質問はクローズドクエスチョンが多かったことに気づく学習者も多く、それをオープンクエスチョンに切り替えることができるようになるために練習を積み重ねていくのが、初期段階での学習プロセスということになります。
オープンクエスチョンがある程度身についてくると、例えば、「Z世代とのコミュニケーションギャップに悩む」クライアントがいたとしたら、下記のような質問ができるようになってきます。
「どんなときにコミュニケーションギャップを感じますか?」
「コミュニケーションギャップの原因は何だと思いますか?」
「どうすれば改善できると思いますか?」
クライアントに考えてもらい、クライアントの中にある答えを引き出すという目的で言えば、これはこれで効果的な質問になると思いますが、一方で、その質問に対するクライアントの答えは、極めて限定的・短期的なものになる傾向があります。
もちろん、クライアントが目先の問題解決を望んでいるのであれば、コーチが上記のような質問をしても構わないのですが、状況に応じて、クライアントの話す問題ではなくクライアント自身に焦点を当てた質問をすることで、クライアントが考えてもいなかったような本質的・長期的な答えを引き出すことができるということを知っておくと良いでしょう。
それは、例えば下記のような質問です。
「あなたはZ世代に対してどんな感情を抱いていますか?」
「コミュニケーションギャップを感じるあなたの価値観は何ですか?」
「あなたはZ世代にとってどんな上司(先輩)でありたいですか?」
コーチングの原則は、「クライアントの中に答えがある」ことを信じることなので、どんな答えが出てくるかはクライアント次第ということになりますが、少なくとも後者の質問群は、より本質的・長期的な答えを引き出すには有効な質問と言えるのではないでしょうか。
では、どうすればクライアント自身に焦点を当てた質問ができるようになるかということですが、ここではひとつの手法として、「質問時に【あなた】を主語にする」ことをお勧めしたいと思います。
具体的には、以下のような質問です。
「あなたはこの現状をどのように捉えていますか?」
「あなたが大切にしている価値観は何でしょうか?」
最初は難しく感じるかもしれませんが、質問をする前に一呼吸おいて、考えてから質問をするように心掛けると、徐々にできるようになってくると思います。
クライアントの思考の「質」を高めるために、このような質問をすることにチャレンジすることもお勧めします。
答えを急ぐ現代のビジネスパーソンに、戦略的に思考の「余白」をつくり出す。これこそが対話によるコーチングの醍醐味と言えるでしょう。
情報の波を留め、マインドフルに自分の内面に向き合う時間は、クライアントに表面的な答えを超えた納得感をもたらしてくれます。
人間だからこそ、プロコーチだからこそできる「本物の対話」が、クライアントの孤独を和らげ、次なる変容へと導いてくれるのです。
コーチングオフィス エン代表 大石 典史